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一時間の雨水が、流れ出す量と時間の関係|大雨と浸水リスクの仕組み
天気予報で「1時間に50ミリの雨」と聞いても、実際にどれくらい危険な状態なのか、感覚的にはつかみにくいという方も多いのではないでしょうか。
住まいを選ぶときに気にしておきたいのは、1年間や1か月間の降水量の合計ではなく、短い時間にどれだけ雨が集中するか、そして、その雨がどのくらいの速さで川や下水道に流れ出ていくかという点です。
同じ「1時間に50ミリ」という雨でも、周囲が畑や森林の土地なのか、舗装され尽くした市街地なのかによって、水のたまり方や引くまでの時間は大きく変わってきます。
気象庁の観測データでは、1時間に50ミリを超えるような激しい雨(短時間強雨)の発生回数が、この数十年で明らかに増える傾向にあることが分かっています。
この記事では、「1時間の雨量」「流れ出す量(流出量)」「時間」という3つの要素がどのように関係しているのかを、国や自治体の資料をもとに整理していきます。
「雨の強さ」は、1時間にどれだけ降ったかで測る
気象庁は、雨の強さを1時間あたりの降水量(時間雨量)を基準に区分しています。おおまかな目安は次のとおりです。
| 1時間降水量 | 呼び方 | 体感の目安 |
| 10〜20mm | やや強い雨 | ザーザーと降り、地面に水たまりができ始める |
| 20〜30mm | 強い雨 | 傘をさしていても濡れる、どしゃ降り |
| 30〜50mm | 激しい雨 | バケツをひっくり返したように降り、道路が川のようになる |
| 50〜80mm | 非常に激しい雨 | 滝のように降り、傘はほとんど役に立たない |
| 80mm〜 | 猛烈な雨 | 息苦しさを感じるほどの降り方で、大規模な災害につながるおそれがある |
この「1時間にどれだけ降ったか」という数値が、後述する排水施設の設計基準や、浸水が起きるかどうかの分かれ目に直結してきます。
降った雨が、そのまま同じ量だけ流れ出るわけではない
1時間に降った雨の量と、川や下水道に流れ込む量(流出量)は、実はイコールではありません。雨の一部は地面に染み込み、残りが地表を流れて排水路や川に向かいます。この「降った雨のうち、どれだけが流出するか」を表す割合を流出係数と呼びます。
森林の土壌は、1時間あたり平均で約260ミリ、条件のよい森林では最大400ミリ程度の雨を吸い込めるという研究結果もあり、よほどの豪雨でない限り雨の大部分が地中にとどまります。一方、道路やコンクリート、屋根で覆われた市街地では地面にほとんど染み込む余地がないため、降った雨の多くが短時間でそのまま地表を流れていきます。
土木の現場では、この流出のピーク量を見積もるために「合理式」と呼ばれる計算式(流出量=流出係数×降雨強度×流域面積÷3.6)がよく使われます。この式からも分かるとおり、ピーク時の流出量は「1時間あたりの降雨強度」に比例して大きくなります。つまり、同じ総雨量であっても、1時間に集中して降るほど、流れ出るピークの量は大きくなるのです。
都市化が進み、田畑や緑地が減って舗装面積が増えるほど、この流出係数は大きくなり、同じ雨量でもより多くの水が、より短い時間で流れ出るようになります。
参考資料:林野庁 関東森林管理局「森林と水の謎を解く(水源かん養機能の理解にむけて)」
「量」と同じくらい大事な、「流れ出すまでの時間」という考え方
降った雨が、流域の一番遠い地点から観測地点まで到達するのにかかる時間を、洪水到達時間(流達時間)と呼びます。この時間の考え方が、浸水リスクを理解するうえでもう一つの重要なポイントになります。
たとえ総雨量が同じでも、その雨が短時間に集中して降るのか、長い時間をかけてゆっくり降るのかによって、川やまちに水が集まる勢いはまったく違います。短時間に集中した雨は、洪水到達時間の間に降った雨量がそのままピーク流量に近づくため、水位や浸水の立ち上がりが急になりやすいのです。
また、都市化によって地表がコンクリートや舗装で覆われ、排水路も整備されると、雨水が地表や水路の上を流れる速度そのものが上がり、洪水到達時間が短くなる傾向があります。これは、「雨が降り始めてから浸水するまでの時間的な余裕が、以前より短くなりやすい」ということでもあります。
都市の排水能力の目安は、長らく「時間50ミリ前後」だった
多くの都市の下水道は、これまで「雨水流出率50%、1時間あたり50ミリ程度の雨」に対応することを標準的な計画として整備されてきました。1時間の降雨がこの設計基準を超えると、下水道や水路が雨水を排除しきれず、道路や住宅地に水があふれる「内水氾濫」が起きやすくなります。
内水氾濫は、河川が増水してあふれる「外水氾濫」とは別の現象で、国内の水害被害額のおよそ4割を占めるとされ、特に建物が密集する都心部では、水害被害額の7割以上を内水が占める地域もあります。
たとえば横浜市では、浸水被害が続いていた低地を守るため、総事業費約1000億円をかけて雨水を一時的にためる大規模な地下トンネル(新羽末広幹線)を整備し、対応できる降雨を1時間50ミリ相当から60ミリ相当まで引き上げました。この事例は、都市の排水能力が「時間何ミリまで耐えられるように作られているか」という設計上の前提を持っていること、そしてその前提を超える雨が降れば浸水につながりうることをよく示しています。
参考資料:気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)「都市型水害に強いまちづくり~下水道整備の新たなステージへ~」
短時間に集中する強い雨は、この数十年で増えている
気象庁のアメダス観測によると、1時間降水量50ミリを超えるような非常に激しい雨や、80ミリを超える猛烈な雨の年間発生回数は、統計を開始した1970年代と比べて、いずれも増加傾向にあることが分かっています。内閣府の防災白書でも、こうした短時間強雨の発生頻度がおおよそ50年間で増えていることが統計的に示されています。
気象庁は今後の気候変動シナリオにおいても、全国的に1時間降水量50ミリ以上となるような短時間強雨の発生回数がさらに増えていくと予測しています。これは、これまで「時間50ミリ」を前提に整備されてきた排水施設にとって、設計の前提そのものが厳しくなっていくことを意味します。
参考資料:内閣府「令和5年版防災白書 特集1 第2章第1節 自然災害の激甚化・頻発化等」
参考資料:林野庁「令和4年度森林・林業白書 第1部特集第3節」
この関係を、住まい選びにどう生かすか
「1時間の雨量」「流出量」「時間」の関係が分かると、ハザードマップの見方も少し変わってきます。同じ土地でも、確認する地図の種類によって前提となる雨の降り方が違うからです。
- 河川の氾濫を示す洪水浸水想定区域図は、24時間や48時間といった長い時間の総雨量を前提にしていることが多い
- 内水氾濫(下水道や水路からの浸水)を示す内水浸水想定区域図・雨水出水浸水想定区域図は、1〜3時間程度の短時間の強い雨を前提にしていることが多い
- 同じ場所でも、河川からの浸水想定は小さくても、内水の想定は別途確認が必要な場合がある
候補地を検討するときは、次のような点をあわせて確認しておくと安心です。
- その市区町村が内水氾濫の想定区域図・ハザードマップを公表しているか
- 周辺が舗装された市街地か、田畑や緑地が多く残る土地かという、地表の状態
- 道路より敷地や建物の床が高いか低いかという、土地の高低差
- 避難のタイミングは、総雨量の予報だけでなく、直近1時間にどれだけ降っているかという情報もあわせて判断すること
国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水・内水・土砂災害・高潮・津波などの情報を住所から重ねて確認できます。候補地を比較する際には、あわせて市区町村が作成している内水関連のハザードマップも確認しておくとよいでしょう。
参考資料:国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
まとめ
浸水のリスクは、「総雨量がどれだけ多いか」だけでは測れません。1時間にどれだけ雨が降るか、そのうちどれだけが流出するか、そして流域や排水施設がその水をどれくらいの時間で処理できるか。この3つの関係によって、同じ雨量でも結果は大きく変わります。
都市の排水施設は長らく「1時間50ミリ前後」を目安に整備されてきましたが、短時間に集中する強い雨は年々増加しており、この前提そのものが厳しくなりつつあります。
住まいを選ぶときは、河川の氾濫を示すハザードマップだけでなく、内水氾濫の想定や、土地の高低差、周辺の舗装状況といった「水のはけやすさ」にも目を向けることが大切です。
「1時間にどれだけ降るか」という視点を持っておくだけでも、候補地を比較するときの見え方が変わってくるはずです。
ハザードマップを見ても、「この土地が内水氾濫に対して、強いのか弱いのか、自分たちだけでは判断が難しい」と感じる段階でも構いません。
また、洋上にはアメダスの設置台数が少なく、情報量が不足しているため海上からのゲリラ豪雨に関しては、警報などが発令されるタイミングが、ギリギリになってしまう事もあります。
当社は地元・茨城で30年以上、宅地開発を行ってきたノウハウが蓄積されています。実際の現場で起きている事象など、公的なハザードマップだけでは分かりにくい、周辺の排水状況や土地の高低差、地域の水はけの特徴など、長く地域を見てきたからこそお伝えできることもあります。
「1時間の雨量」と「流れ出す時間」という視点も踏まえながら、これからの暮らし方に合った地域や住まいを一緒に整理していきます。茨城への住み替えを検討し始めた段階から、お気軽にご相談ください。
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