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擁壁に潜む危険|高低差のある土地を選ぶ前に知っておきたいこと

坂の多い住宅地や高台の分譲地を歩いていると、家と家の間や道路沿いに、コンクリートやブロックでできた壁を見かけることがあります。

これが「擁壁(ようへき)」です。

普段の生活の中で、擁壁を意識することはあまりないかもしれません。

しかし、擁壁は古くなったり施工に問題があったりすると、地震や大雨をきっかけに崩れ、住宅そのものに被害が及ぶことがあります。

近年は、都市部の住宅地で擁壁が突然崩落し、隣接する住宅が倒壊する事故も報道されています。

茨城県内にも、高台や丘陵地に造成された住宅地は少なくありません。

この記事では、擁壁にどのような危険が潜んでいるのか、法律上どのような位置づけになっているのか、そして住まい選びの際にどこを確認すればよいのかを整理します。


擁壁とは何か

擁壁とは、高低差のある土地で、盛土や切土によってできた斜面(崖)の土が崩れるのを防ぐために設置される、コンクリートやブロック、石などでできた壁状の構造物のことです。

宅地を造成する際、平坦な土地を広く確保するために斜面をつくることが多く、その斜面を安定させる役割を擁壁が担っています。土の重さや雨水の水圧、その上に建つ建物の荷重を支えるため、見た目以上に大きな力がかかる構造物です。

「擁壁」と「土留めブロック」は何が違うのか

高低差のある土地では、鉄筋コンクリート造の本格的な擁壁ではなく、コンクリートブロックを積んだだけの「土留めブロック」で段差が処理されているケースも少なくありません。見た目はよく似ていても、法律上の扱いや強度は大きく異なります。

建築基準法施行令では、擁壁として扱われる工作物は鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造、または間知石などの練積み造とし、腐食しない材料を用いることが定められており、コンクリートブロックは擁壁の材料として原則認められていません。宅地造成等規制法でも同様の考え方が採られています。

そのため多くの自治体では、補強コンクリートブロックを土留めとして使う場合、土に接する部分の高さをブロック2段程度(40センチメートル以下)までに制限しています。これを超えて土を留めているブロック積みは、想定された使い方を超えている可能性があります。

見た目が擁壁と似ていても、内部に鉄筋が入っていない、空洞にモルタルが充填されていない、しっかりした基礎がないといった土留めブロックは、擁壁に比べて土圧や水圧への強度が低く、大雨や地震をきっかけに崩れるリスクが高くなります。先述した2021年の大阪市西成区の事故も、石やコンクリートブロックを積み上げただけで、モルタルなどを充填していない簡易な造りの土留めが崩落したケースでした。

中古住宅や土地を見る際は、段差を支えているのが鉄筋コンクリート造の本設擁壁なのか、コンクリートブロックを積んだだけの土留めなのかを区別しておくことが大切です。判断が難しい場合は、施工会社や自治体の建築指導課、専門の調査会社に確認することをおすすめします。


全国で相次ぐ擁壁の崩落事故

擁壁の崩落事故は、決して珍しいものではありません。

2021年6月には、大阪市西成区の住宅地で高台の擁壁が崩落し、擁壁沿いに建っていた住宅が次々と倒壊する事故が発生しました。崩れたのは、石やコンクリートブロックを積み上げただけで、隙間にモルタルなどを充填していない簡易な造りの擁壁でした。

2025年9月には、東京都杉並区で高さ4メートルほどの擁壁が突然崩落し、木造2階建て住宅が倒壊する事故も起きています。

背景にあるのは、1960年代から1980年代にかけて造成された住宅地の擁壁が、耐用年数の目安とされる30〜50年を超えて老朽化していることです。専門家の推計では、崩落のリスクを抱える擁壁は全国に100万〜200万カ所以上あるとされ、近年の豪雨や台風、大地震がそのリスクをさらに高めているといわれています。

擁壁の危険なサイン

専門業者でなくても、目視である程度の異変に気づけることがあります。特に注意しておきたいのが、次のようなサインです。

サイン見るべきポイント
ひび割れ(クラック)表面のひびから水が浸入すると、内部の劣化が進みやすくなる
はらみ出し(膨らみ)壁面が外側に向かって膨らんでいる場合、内部の土圧に耐えきれなくなっている可能性がある
水抜き穴の詰まり落ち葉や土、雑草で詰まっていると排水されず、内部に水がたまって劣化を早める
二段擁壁・増し積み既存の擁壁の上にさらに擁壁やブロックを重ねた造りは、強度不足になりやすく違反となる場合もある
湧水・湿潤擁壁表面がいつも湿っている、水がしみ出している場合は地下水位の上昇が疑われる

これらのサインが見られる場合、専門業者による詳しい調査が必要です。放置していると、豪雨や地震をきっかけに一気に被害が拡大するおそれがあります。

参考資料:国土交通省国土技術政策総合研究所「既存造成宅地擁壁の老朽化診断 目視点検調査要領」


擁壁と法律:建築基準法・宅地造成等規制法・盛土規制法

擁壁は、いくつかの法律や条例によって規制されています。

建築基準法では、がけ崩れなどによる被害を受けるおそれがある場合、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならないと定められています。

また、高さ2メートルを超える擁壁を新しく設置する場合は、工作物としての建築確認申請と、完了後の検査済証の取得が必要です。検査済証があるということは、法律上の基準を満たした設計・施工がされていることの裏づけになります。

一方、1962年に施行された宅地造成等規制法は、規制区域内で行われる宅地造成工事に許可を義務づける法律でしたが、対象になる区域や行為には抜け穴がありました。2021年7月に静岡県熱海市で発生した盛土の崩壊による土石流災害を教訓に、2023年5月、これを抜本的に改めた「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」が施行されました。

盛土規制法では、市街地や集落などの「宅地造成等工事規制区域」に加え、山間部や斜面地など人家に被害を及ぼしうる「特定盛土等規制区域」も指定できるようになり、規制の対象となる区域と行為の両方が広がっています。

参考資料:国土交通省「盛土・宅地防災:宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)について」

参考資料:全日本不動産協会「盛土規制法(宅地造成および特定盛土等規制法)施行で何がどう変わった?」

茨城県内でも進む規制区域の指定

盛土規制法に基づく規制区域の指定は、都道府県が順次進めています。

茨城県では、令和7年(2025年)4月1日に、水戸市を除く県内全域が「宅地造成等工事規制区域」に指定されました(水戸市は独自に区域を指定しています)。指定後は、区域内で一定規模以上の盛土や切土を行う場合、茨城県知事の許可が必要になります。

これは、茨城県内のほぼ全域が、程度の差はあっても盛土・擁壁に関する規制の対象になったことを意味します。住まいを探すエリアが「山や崖から離れているから関係ない」とは言い切れなくなっているのが実情です。

参考資料:茨城県「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)について」

茨城県建築基準条例の「がけ条例」

茨城県には、盛土規制法とは別に「がけ条例」と呼ばれる規定が茨城県建築基準条例に定められています。

対象になるのは、水平面からの勾配が30度を超え、かつ高さが2メートルを超える「がけ」です。自然の崖か、擁壁で造られたものかは問われません。

がけの下端(がけの上に建てる場合は上端)から、がけの高さの2倍以内の距離に建物を建てたり、敷地を造成したりする場合には、がけの状態や建物の構造に応じて、安全な擁壁を設けるなどの対策が必要になります。つまり、がけや擁壁に近い土地では、建物を自由な位置に建てられないケースがあるということです。

水戸市、日立市、土浦市、古河市、高萩市、北茨城市、取手市、つくば市、ひたちなか市など、独自に建築基準条例を定めている市もあるため、対象エリアの詳しい内容は各市町村に確認する必要があります。

参考資料:茨城県「茨城県建築基準条例」


中古住宅・土地を選ぶときに確認したいポイント

高低差のある土地や、擁壁のある中古住宅・土地を検討する際は、次のような点を確認しておくと安心です。

  • 擁壁の高さが2メートルを超える場合、工作物としての検査済証があるか
  • 検査済証がない場合、施工時の図面や工事記録・写真が残っているか
  • 擁壁の上にさらに擁壁やブロックを積んだ「二段擁壁」「増し積み」になっていないか
  • 段差を支えているのが鉄筋コンクリート造の擁壁か、コンクリートブロックによる土留めかを確認する(土留めブロックの場合、土に接する高さが40センチメートルを超えていないか)
  • ひび割れ、はらみ出し、水抜き穴の詰まりなど、目視でわかる劣化サインがないか
  • 擁壁が隣地との境界にある場合、管理・修繕の責任がどちらにあるか
  • 検討している市町村が盛土規制法の規制区域や、がけ条例の対象区域にあたるか

検査済証がない、いわゆる「既存不適格擁壁」であっても、それだけで住めないわけではありません。ただし、将来的な建て替えや増改築の際に、擁壁の造り替えや補強工事が必要になり、想定外の費用がかかる可能性があります。購入前にどこまで分かっているかを整理しておくことが、後々のトラブルを避けることにつながります。

参考資料:LIFULL HOME’S PRESS「安全な擁壁の見分け方、改修費用を徹底調査。」

茨城で高低差のある土地を選ぶときの考え方

茨城県内には、平地だけでなく、常陸太田市や笠間市、日立市、北茨城市など、高低差のある地形の住宅地も少なくありません。景色がよく、価格が抑えられているといった魅力がある一方で、擁壁の有無や状態は必ず確認しておきたいポイントです。

「見た目がきれいだから大丈夫」と判断するのではなく、検査済証の有無や、施工時期、劣化のサインまで含めて確認する。これは、これから長く暮らす住まいを選ぶうえで欠かせない視点です。


まとめ

道路、隣接地との高低差は必ずあると言っても過言ではありません。先住者が造作した2段以上、積み上げているブロック塀も、注意が必要です。老朽化した古いブロック塀が地震などで倒壊する事故は、度々とニュースで見る事があります。擁壁は、特に高低差のある土地や、水路と接する土地に建つ住宅を陰で支える重要な構造物です。しかし、老朽化や施工不良があると、地震や豪雨をきっかけに崩落し、住宅そのものに被害が及ぶことがあります。

ひび割れやはらみ出し、水抜き穴の詰まりといった劣化のサインは、専門家でなくてもある程度確認できます。あわせて、検査済証の有無や、盛土規制法・がけ条例といった法律・条例上の位置づけも確認しておくと安心です。

また、段差を支えているのが鉄筋コンクリート造の擁壁なのか、コンクリートブロックを積んだだけの「土留めブロック」なのかも見分けておきたいポイントです。土留めブロックは擁壁に比べて強度が低く、想定を超えた高さで使われている場合は特に注意が必要です。擁壁も正しく施工され許可、検査済なのか、購入前に確認する必要があります。

擁壁の所有権は、土地の所有者に帰属されており、万が一の事故などで第三者が被害を受けた場合には、、所有者自身が、責任を負うことになります。

茨城県内でも、令和7年4月からほぼ全域が盛土規制法の規制区域に指定されており、高低差のある土地に限らず、住まい選びの際に意識しておきたいテーマになっています。

価格や間取りだけでなく、土地の成り立ちや擁壁の状態まで確認したうえで、候補地を絞り込んでいくことをおすすめします。

茨城への住み替えを検討する中で、「気になる物件に擁壁があるけれど、大丈夫か判断できない」「検査済証があるかどうかの調べ方が分からない」という段階でも構いません。また、空き家にしている実家など、擁壁の上に建築されている。又は古いブロック塀、大谷石で造られた塀等を放置している場合など、早めに対処することをお勧めします。危険です。ブロック塀などの処分費も年々増加しています。

当社は地元・茨城で30年以上、不動産に携わってきました。擁壁のある土地や高低差のある住宅地についても、宅地開発で擁壁を設置していたり、仲介物件をこれまで多くを、見てきたことをふまえて、確認すべきポイントを整理しながらお伝えできることがあります。

現在のお住まいの売却を含め、茨城への住み替えを検討し始めた段階からお気軽にご相談ください。

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