不動産知識
二世帯住宅を選択する理由
最近では、二世帯住宅を検討されるお客様は減少傾向かと思います。なぜ減少しているのか、理由を探ってみましょう。
【二世帯住宅は大きくわけて二種類】
二世帯住宅は同居しているものを除くと大雑把に二種類に分類されます。
「完全分離型」
完全分離型とは、棟割住宅。棟割長屋とも呼ばれるものになります。
玄関から、お風呂、キッチン、トイレそして居住スペースを完全に分けて造られています。中には玄関ホールに鍵付きドアを設置して、お互いに行き交うすることができる様にされている方もいらっしゃいます。完全分離型であれば、一方を賃貸に貸し出し家賃を貯蓄に回すことも可能です。不動産会社、建築会社で積極的に棟割住宅を「二世帯住宅」として、住宅ローンに組み込む方法を提案されている業者も存在します。現実には住宅ローンを利用している物件を、当初から賃貸目的で融資を受ける事は、あまり良い方法ではありませんが、親世帯が退去又は転出してしまった場合には、貸し出す事も可能かもしれません。
「一部共用型」
一部共用型とは、部分分離とも言い換えられます。この「一部共用型」に関しては、将来的に問題を残す可能性があり、二世帯住宅の問題点として挙げられる、家族構成あるいは世帯構成に変化が生じたときの対処方法に問題が生じます。それが、必要な設備が足りない又は、余るといった現象です。
水回りが各二か所あっても玄関が一か所では、そのままで、貸し出すことは困難で将来、賃貸として利用することは難しくなります。貸し出す事を考えない場合でも、将来的に居住者が減った場合、キッチン、お風呂が二か所ある必要がなくなります。
二世帯住宅を選ぶ理由
敷地面積
まず、物理的な問題として「敷地面積」があげられます。親と近くに住みたいので同じ土地に二棟の家を建てるというのは困難です。それならば一軒の大きな家を建てるほうが難しくないでしょう。
資金力
次に、親世帯、または子世帯の収入、返済能力による理由があげられます。
ご夫婦での「ペアローン」、いわゆる「所得合算」と同じ考え方ですね。世帯の総収入額を多くすることで、より大きな住宅を建築することが可能になります。また、親世帯単体だと現在の年齢からの返済期間が短く「月々の返済額」が、現実的でない場合にも子供世帯と、協力する事で、家族の目的が達成できます。
二世帯住宅を建築する場合、資金力に関する課題を解決する為に選ばれるお客様が多数です。
「完全分離型」と「一部共用型」どちらがよいのか
建築した後のことを考えるのであれば「完全分離型」をおすすめします。ただし、完全分離型は全ての機能を二か所に設けるため建築費がかかり、広い敷地も必要になるため土地代もかかり、結果として建築コストが高くなります。
「一部共用型」は建築コストを抑えることができますが、後々「相続」又は「債務」で問題が発生する可能性があります。ではどのような問題が発生するのかを解説します。
「債務」
第一に「債務」です。ローンを組んで家を建築した場合、住宅ローンの返済を終えることで、完全な所有権を得ることになります。ですが、返済を終えるまでの予想外の出来事も考えなくてはいけません。例えば火事や震災で家を失うケース。その為に「火災保険」や「団体信用生命保険」が存在します。しかし、保険適用外の出来事で債務の返済が困難になった場合には催促者からの催促、差押、競売などに陥る場合もあります。その場合、この家に住むすべての世帯に関わるため、親世帯または子世帯のいずれかが、住む続けることができなくなります。こうなってしまったら、残ったローンを一括返済するしか回避する手段はありません。
また、親が所有している土地に子が家を建てた場合、子が抵当権を設定できるのは土地の上にある建物だけになります。これでは担保が不足している、または子の返済能力が十分でないと金融機関が判断した場合、親の土地を担保にして「物上保証人」になることがあります。「物上保証人」は土地を担保として提供するため、万が一の場合には土地を失うことになります。時には「連帯保証人」に組み込まれている場合があるので、融資を受ける際には、必ず「書類」に目を通して「理解」してから「記名」「押印」をする事をお勧めします。金融機関で緊張していて「何」に印鑑を押したか覚えていないなんて事は無いように気を付けてください。
「相続」
次に親が亡くなられた場合に考えられる「相続」です。融資を受ける場合に「連帯債務」であった場合には「団体信用生命保険」に、加入していると考えられます。その場合には「連帯債務」に関わる融資残高に死亡保険金が充当されますので、債務は減ると思われます。しかし、何事にも例外がありそうでない場合も当然考えられるので、注意は必要です。
債務に関しては生前に本人の意思で行われてる事なので仕方がありませんが、「相続」に関しては配偶者並びに自分以外の兄弟姉妹から「同意」を得なえればなりません。不動産以外の資産及び債務に関して、話し合いを行い「分割協議書」を作成し「相続登記」を行う必要があります。他の相続人と疎遠であったり、被相続人が他で養子縁組などを行っていたらどうしましょう?相続は、自分だけでは解決できない問題を孕んでいます。
また、相続の問題は親の死だけには限りません。「子世帯」の債務者が離婚などで、一人で転出してしまっていた場合に、住宅ローンを払い続けている確証は得られません。また、財産分与を行わずに離婚、再婚された後に養子縁組又は、新たに子供が生まれた後に、亡くなられた場合には、住宅ローンを組んだ時には想定できない事態に巻き込まれてしまいます。
【まとめ】
住宅会社に二世帯住宅を提案された場合には、十分に考えてから答えを出しましょう。
「完全分離型」は中古住宅としての視点で見ると「賃貸住宅」としてお支店であれば流通は可能かと思われます。都心であれば通常の戸建よりも優遇される可能性もあるかもしれません。
「一部共用型」はシェアハウスや会社の寮としてなら流通の可能性はあります。ですが、一般住宅として考えると流通性は乏しいと思われます。そうなると、満足いく査定結果を引き出すことは難しいでしょう。
また、二世帯住宅を検討するうえで、不動産会社、またはハウスメーカーの営業からはメリット部分を多く強調されるかと思われます。その場合、メリットと聞くと同時に反面を考えるようにしましょう。
例)
メリット1・敷地面積に限りがある場合、有効活用ができる。
メリット2・親世帯又は子世帯との所得合算が可能となり、予算も多く取れる
メリット3・親世帯に孫の面倒を見て貰えるので、お互いにWinWire
この場合、メリット1に反すれば、敷地に余裕が無いため、後々の駐車場増設、住宅の増築などに相当な制限が生まれる。
メリット2に反すれば、所得合算=連帯保証人となり、死別、離婚、相続問題が起きる可能性が高く、不動産の分割も難しくなり居住しない兄弟姉妹に所有権の一部が相続される可能が生まれる。
メリット3に反すれば、孫の面倒を見てもらったのち、両親の介護を見過ごすことは出来ず、他の兄弟姉妹との協力関係にも影響を及ぼす。
このようにメリット=デメリットが必ず生まれます。
その為の対抗手段として、両親には遺言書の作成は勿論ですが、遺留分に相当する財産形成も同時行って頂く必要があります。また、既に二世帯住居にお住まいで将来に売却をお考えの方は、建物の老朽化が進む前に一度は、不動産会社に査定を依頼することをお勧めします。その時から対策案を考え問題を先送りすることは、出来るだけやめていただくことをお勧めします。