不動産知識
共有名義不動産の売却はできる?
3つの売却方法・必要書類・トラブル対処法を民法改正をふまえて解説
相続や共同購入によって不動産が複数人の名義(共有名義)になっている場合、「売りたいけど他の共有者と話がまとまらない」「そもそも誰が共有者かわからない」といった悩みを抱えるケースは少なくありません。
この記事では、共有名義不動産の基本的な仕組みから、令和3年(2023年4月施行)の民法改正によって新たに整備された制度まで、売却の方法・必要書類・トラブル対処法を正確に解説します。
1.共有名義不動産が生じる主なケース
- 夫婦がペアローンや連帯債務で共同購入した住宅
- 親から複数の相続人が不動産を相続した場合
- 兄弟姉妹が共同で土地を取得した場合
- 相続が繰り返され、遠縁の親族間でいつのまにか共有になっている場合
共有名義不動産は単独名義の不動産と異なり、売却・処分には基本的に共有者全員の同意が必要です。共有者間で意見が対立したり、人数が多くなると売却が難しくなります。
また、相続登記がおこなわれないまま年月が経つと、相続が繰り返されて共有者が増加するケースも多く、全員を特定するだけでも大変な作業になることがあります。
2. 令和3年(2023年4月施行)民法改正で何が変わったか
重要:令和3年(2023年4月施行)民法改正のポイント
従来の民法では、共有不動産の売却(変更行為)は「共有者全員の同意」が必要でした。共有者の一部が所在不明であったり、協議に応じない場合、売却が事実上不可能になる問題がありました。
2023年4月1日施行の民法改正(令和3年法律第24号)により、以下の制度が新設・明確化されました。
① 共有物分割の明確化(民法258条改正)
「協議が調わないとき」に加え「協議をすることができないとき」も裁判所へ分割請求が可能に。価格賠償(代償分割)が条文上に明文化(民法258条2項2号)。
② 所在不明共有者への対応制度の新設(民法262条の2・262条の3)
所在不明の共有者の持分を、裁判所の許可を得て他の共有者が取得・譲渡できる制度が新設。ただし相続により生じた共有の場合、相続開始から10年経過後に限り利用可能。
③ 管理ルールの整備(民法252条等)
共有物の管理(利用・改良など)について、持分の過半数での決定が明確化された。
3. 共有名義不動産の売却方法
方法1|共有者全員の同意を得て不動産全体を売却
共有者全員が売主となり、不動産全体をそのまま市場で売却する方法です。市場価格での売却が可能で、3つの方法のなかでもっとも高い売却価格が期待できます。
【メリット】
- 市場価格での売却が可能
- 売却価格を共有持分に応じて配分できる
- 手続きが通常の不動産売却と同じ流れで進む
【デメリット・注意点】
- 共有者1人でも反対すれば手続きが進められない
- 共有者の人数が多いほど全員の合意形成が難しくなる
- 書類は共有者全員分が必要で、準備に時間がかかることがある
- まず共有者が誰なのかを確認することが第一歩(相続登記がされていない場合は特に注意)
方法2|自分の持分のみを売却
自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なく単独で売却することが民法上の権利として認められています(民法206条)。
売却先の主な選択肢は以下のとおりです。
① 他の共有者に売却する
その不動産を実際に利用している共有者は、持分を多く持つほどメリットが大きいため、交渉がスムーズに進む可能性があります。
② 土地の場合は「分筆」して単独名義にする
土地を「分筆(一つの土地を複数の土地に分けて登記し直す)」することで、各自の土地を単独名義にして自由に売却できるようになります。 ただし形状・接道条件などによって分筆できない場合があります。
③ 第三者・専門買取業者に売却する
他の共有者との合意が困難な場合、共有持分を専門に扱う買取業者への売却も選択肢です。ただし以下のリスクに注意が必要です。
【持分の第三者売却における注意点】
- 単独名義の不動産に比べ、売却価格が大幅に低くなりやすい(市場価格の50〜70%程度が目安)
- 買取業者が他の共有者に強引に持分の買取や売却を迫り、トラブルに発展するケースがある
- 見知らぬ第三者が共有者に加わることで、不動産の管理・利用をめぐって紛争が生じる可能性がある
方法3|共有物分割請求(裁判)
共有者間で協議が調わない場合、または協議自体ができない場合、各共有者はいつでも裁判所に共有物の分割を請求する権利があります(民法256条1項・258条1項)。
裁判所による分割方法は以下の3種類です(民法258条2項・3項)。
① 現物分割
土地などを物理的に分けて各共有者の単独所有にする方法。建物や接道条件を満たせない土地など、現物分割できない場合は②③へ。
② 価格賠償(代償分割)
共有者のうち1人(または複数人)が不動産全体を取得し、他の共有者には持分に相当する金銭を支払う方法(民法258条2項2号)。令和3年改正で条文上に明文化された。
③ 競売分割(換価分割)
①②の方法ができない場合、裁判所が競売を命じ、売却代金を持分割合に応じて分配する。競売は市場価格より低くなる傾向がある最終手段。
【共有物分割請求のポイント】
- 共有者のうち1人でも請求できる権利(民法256条1項)
- 裁判前に弁護士・司法書士への相談が強く推奨される
- 訴訟まで至らず、裁判所への申立てを背景にした話し合いで解決するケースも多い
- 所在不明共有者については、改正民法(262条の2等)に基づく新制度も活用できる
3つの売却方法の比較
| 比較項目 | 全員同意で売却 | 持分のみ売却 |
| 他の共有者の同意 | 全員必要 | 不要 |
| 売却価格 | 市場価格(最も高い) | 市場価格の50〜70%程度 |
| 手続きの難易度 | 合意形成が難しい場合がある | 比較的シンプル |
| 買主 | 一般市場の購入希望者 | 共有者・第三者・買取業者 |
| 主なリスク | 1人の反対で停止 | 価格低下・第三者トラブル |
| 比較項目 | 共有物分割請求(裁判) |
| 他の共有者の同意 | 不要(民法上の権利) |
| 売却価格 | 競売の場合は市場価格より低い |
| 手続きの難易度 | 弁護士関与が必要・時間と費用がかかる |
| 売却・分割の方法 | 現物分割・価格賠償・競売の3種類 |
| 主なメリット | 話し合いが不可能でも最終的に解決できる |
4. 共有名義不動産の売却に必要な書類
共有名義不動産全体を売却する場合の必要書類は、基本的に通常の不動産売却と同じです。ただし、共有者全員分の書類が必要になるため、準備に時間がかかることがあります。
共有名義不動産の売却に必要な主な書類
[su_box title=”【物件に関する書類】” style=”soft”]● 登記識別情報(登記済権利証):所有者であることを証明するもの
● 地積測量図・境界確認書:先祖代々の土地などで書類がない場合は土地家屋調査士に測量を依頼
● 固定資産税納税通知書・評価証明書[/su_box]
[su_box title=”【共有者全員分が必要な書類】” style=”soft”]● 身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
● 住民票(売却時の住所が登記住所と異なる場合は住所変更登記も必要)
● 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)・実印[/su_box]
[su_box title=”【その他】” style=”soft”]● 抵当権等の担保が設定されている場合は金融機関との調整も必要[/su_box]
書類の準備と並行して、まず「共有者が誰であるか」を登記簿や戸籍で確認することが重要です。相続が繰り返されているケースでは、知らないうちに共有者が増加している可能性があります。
5. 共有名義不動産の売却で起こりやすいトラブルと対処法
トラブル① 共有者間で意見が対立し、売却が進まない
「売りたい」と「売りたくない」で共有者間の意見が割れるケースです。
- まずは丁寧な話し合いを試みる。感情的な対立になりやすいため、中立的な不動産会社や専門家の仲介を活用することも有効
- 話し合いが不可能な場合は、弁護士に相談のうえ「共有物分割請求」を検討する(方法③参照)
- 裁判を背景にした示談交渉で、実際には訴訟まで至らずに解決するケースも多い
トラブル② 共有者の所在が不明・連絡が取れない
相続登記がおこなわれていない場合などに多く発生します。
- 不動産登記簿・戸籍・住民票などで共有者を特定する
- 所在不明の共有者については、令和3年民法改正で新設された「所在不明共有者の持分取得・譲渡制度」(民法262条の2・262条の3)の活用を弁護士に相談する
- 相続開始から10年以上が経過している場合は、この制度が利用しやすくなる
トラブル③ 買取業者が他の共有者に強引に売却を迫る
持分を第三者(買取業者)に売却した場合、その業者が残りの共有者に対して強引な買取交渉や共有物分割請求訴訟を起こすケースがあります。
- 持分を第三者に売却する前に、他の共有者への事前通知・交渉をおこなうことがトラブル防止につながる
- もし業者から強引な接触を受けた場合は、速やかに弁護士に相談する
- 共有物分割請求を受けた場合も、弁護士への相談が不可欠
トラブル④ 相続人が確定していない状態で売却しようとする
相続が発生した後、遺産分割協議が完了していない「遺産共有」の状態では、持分の売却も制約を受けることがあります。まず遺産分割協議をおこない、共有者(相続人)を確定させることが先決です。
6. よくある質問(FAQ)
Q. 共有者の1人が売却に反対している場合、どうすればよいですか?
A. まずは話し合いを試み、それでも解決しない場合は「共有物分割請求」(民法256条・258条)を裁判所に申し立てることが可能です。最終的には裁判所が分割方法を決定するため、共有状態を解消することができます。弁護士への相談を強くおすすめします。
Q. 自分の持分だけを売るときに、他の共有者への通知義務はありますか?
A. 法律上の通知義務はありません。ただし、他の共有者に先に売却の意思を伝え、購入の意向を確認することが、トラブル防止の観点から実務上は望ましいとされています。
Q. 共有者全員の同意を得て売却する場合、全員が同じ場所で署名・押印する必要がありますか?
A. 同じ場所での署名・押印は必ずしも必要ではありません。共有者が遠方の場合や海外在住の場合は、郵送や各地での手続きに対応することが一般的です。ただし、必要書類の準備に時間がかかるため、早めに手続きを開始することをおすすめします。
Q. 共有持分の売却にかかる税金はどうなりますか?
A. 共有持分の売却も通常の不動産売却と同様に、譲渡所得税・住民税の課税対象となります。また、相続した共有持分を売却する場合は「相続空き家の3,000万円特別控除」の適用可否を確認することをおすすめします。詳しくは税理士にご相談ください。
まとめ
共有名義不動産の売却には、①全員同意による売却、②持分のみの売却、③共有物分割請求(裁判)の3つの方法があります。

共有名義不動産の売却は、法律・税務・不動産の3分野にまたがる複雑な問題です。状況に応じた最適な方法を選ぶために、弁護士・税理士・宅地建物取引士などの専門家への早めのご相談をおすすめします。
ランドワークスでは、共有名義不動産の売却・活用についてのご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
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